VALORANTで学ぶ、『必要十分条件』

必要十分条件




 それは数Aで初めて出会い、その後も登場するたびにそのややこしさから高校生たちの頭をぐちゃぐちゃにしていく言葉...。

 『初めて習ったよ』という人だけでなく、『実は僕、高3なんだけど...』という人でも、『あれ、どっちがどっちだ...?』となってしまう人、少なくないのではないでしょうか。今、何回否定の『ない』を使ったでしょうか。

前置き

 そもそも数学というのは、『自然科学の基礎』と言われる事もあり、具体的な要素を無くして、『より抽象的に、より抽象的に』と洗練された学問です。かのニュートンも、万有引力を発見した物理学者であると同時に、物体の運動を考える上で微分積分学を生んだ数学者でもあります。

 それが数学の魅力であると同時に、『文字ばっかりでわかりづらい』『難しい用語が多い』といった、『数学嫌い』の学生を生み出してしまっている要因になっているとも思います。

 そんな数学嫌いの皆さん同様、中学生の頃は数学に苦手意識があり、定期テスト20点台も記録していた僕が、高校で理系を選択してから『あれ?』と躓いていた時に必ずやっていたことが、『具体例をイメージする』ことでした。この考え方は、『必要十分条件』以外の場面でも必ず役にたつと思います。

 それでは早速必要十分条件についておさらいしていきましょう。

定義

 まずは定義の確認です。苦手な人は定義という言葉を見るだけで蕁麻疹が出そうになるかもしれませんが、サラッと流し見でもいいのでチェックしておいてください。

命題、 p⇒q が真 である時、

qp必要条件pq十分条件 という

 ややこしいですね

 この""は、『ならば』と読みますが、これに関しては口に出しながらa⇒b(aならばb)a⇒b(aならばb)って書いてればそのうち覚えます。力技ではありますが、書く順番、言葉の意味、⇒の向きが対応してるので、頭に入ってきやすい部類だとは思います。

 では改めて、この定義を具体化してあげて、VALORANTで例えてみましょう。

具体化

 定義の"p"に『プロゲーマー』"q"に『デスマ強い』という具体例を入れてみます。せっかくなので数学っぽく、『代入』なんて言ってみましょうか。

 代入した上で命題を読み直してみると、

『プロゲーマー』ならば『デスマ強い』

 これがであるかどうかを考える必要がありますね。うん、合ってるので真です。

 大会でよく見るようなプロの方々は、そこんじょそこらのデスマッチでは負けません。

 僕もよくプロが『デスマ〇連勝した~』みたいなツイート上げてるのを見て、『おれは!!!!弱いっ!!!!』ってどこぞの兄を失った海賊みたいになってしまいます。

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命題の逆も考える

 さて、ここで命題の『逆』についてもかんがえてみましょう。数学における逆は⇒の向きを変えるんでしたね。q⇒p という命題にも先ほどの具体例を代入してみましょう。

『デスマ強い』なら『プロゲーマー』

 これは偽でしょう。

 デスマで死ぬほど強い匿名の敵に当たって、『おいおい、こいつ絶対プロゲーマーじゃ~んウキウキ』って思ってリザルト画面を見たらわけわからん見たこともないID出てきた時のなんとも言えない無力感、皆さんも身に覚えがあると思います。

 そうなんです。デスマの撃ち合いが強いからといって、必ずしもランクなどの実戦で強いとは限らないんですよね(戒め)。

改めて語句のチェック

 p=(プロゲーマー)、q=(デスマ強い)という条件のもとで、p⇒qという命題が真であり、その逆のq⇒pが偽であることが確認できたところで、それぞれの名称について見ていきます。

 必要だの、十分だの、こんな感じで抽象化されたネーミングは、一見すると『覚えづらい、わかりづらい』ように思えますが、昔の頭のいいお偉いさんが考えた物なので、ちゃんと理にかなったネーミングになっていることが確認できると思います。

 デスマが強い事、つまりqはプロゲーマーである、pには必要条件です。

 おや、ほぼ定義通りの文章が出てきましたね。定義にはqをpの必要条件という、と書いてあったはずです。

 そう、デスマが強いことはプロゲーマーになるための『必要条件』なのです(もちろん、どのような過程を経てデスマなどの撃ち合いが強くなったかは人それぞれですが)

 必要条件さえどっちかわかってしまえば、『その反対側が十分条件だ!』というふうに決めうってしまってもいいですし、ちゃんと理論的に『プロであれば十分にデスマが強いはず』と考えてもいいですが、なんにせよ十分条件についてもわかってくると思います。

必要十分条件、同値

 また、今回は『命題の逆は偽になる』ような具体例をもってきましたが、もちろん真になるパターンもあります。                                                                                                                                              

 例えば、

生きている⇒死んでいない

死んでいない⇒生きている

 こんな例の場合は、⇒の向きを逆にしてもどちらもになりますね。このようなとき、『生きている』事は『死んでいない』事の必要十分条件と言います。

 『は?言い換えただけだから当たり前じゃん』と思うかもしれませんが、必要十分条件とはそういうもので、必ず左右の事象は同じ事を指すので、この時のpqの関係を同値と言い、p⇔q というように表すこともあります。

 よく証明なんかで式変形する時、

 xy=0

⇔x=0 ∧ y=0

みたいな感じで気軽に使いがちですが、本当に『⇔で結んだ二つが同値関係か』はきちんと精査する必要があります。

 

まとめ

 とまぁこんな感じで、冷凍した魚をまた解凍するように、抽象化されたものを具体化してあげると、当たり前ですが実際の"物"をイメージできるので、『スッ』と言葉の意味が頭に入ってきます。

 必要であれば、具体例を確認したうえでまた、p⇒q などの文字に戻して問題用紙の余白にメモしてあげれば、問題を解く時にスムーズに考えられるようになると思います。

 また、数学でそこそこ出てくるのは当然として、この『必要条件、十分条件』という言い回しはどうやらビジネスシーンなんかでもちょこちょこ出てくるようです(筆者はまだ学生なので伝聞ベースの話です)

 数学でならった用語を文系の人たちも含めて一般的なビジネスという文脈で使うのって中々興味深いですよね。会話しているお互いが勉強をしっかりしていて、意味が通じるのであればそれだけ便利な言葉という事です。

 こういうのが所謂、教養が出る部分なのかなぁなんて思ったりもします。『机に齧りついてみっちり勉強しろ!』なんて事が伝えたいわけではないのですが、最低限、どんな人とでも会話が通じるレベルの教養というのは身に着けておきたいものです。

 

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