GC day1 KRÜ.F vs C9W 所感
なぜC9Wは強いのか...
ベルリンの地にて、ついに開幕したVCT Game Changers Championship(以下GC)。初日は3試合が行われ、G2 Gozenがダブルエリミネーション方式のトーナメントにおいて、アッパーファイナルまで駒を進めた。
日本からは、東アジア予選を制した"FENNEL HOTELAVA"が参戦しており、日本時間11/17の午前2時よりTeam Liquid Brazilとの初戦を控えている。
今回は、そんなGC世界大会の記念すべきオープニングマッチとなった、Cloud9 White vs KRÜ Femの試合、特にアセントを振り返っていく。
『アセント』
KRÜ.F のピックマップ、アセントで試合ははじまった。
構成
KRÜ.Fが典型的なアセントの構成を出してきたのに対して、C9Wはノーデュエリスト構成だ。
サイファーは今後のアップデートで上方修正が予定されているが、現時点ではかなりピック率の低いエージェントになっている。(11/16 18:08追記 アップデートにより、現行パッチでは既にサイファーは強化されているものの、競技シーンにはまだ適応されていない)
一般的にアセントは、メインの入り口が両サイトとも狭いため、ミッドを使った攻め方が重要視されるが、オペレーターの得意なエージェントのいないC9Wがどのようにミッドを掌握していくのかが気になる所だ。
1st "KRÜ.Fの選択とC9Wの撃ち合い"
C9Wの攻めでスタートしたピストルラウンド。まずC9Wはミッドの情報を取りに行く。両サイドはきっちり詰め警戒して、ミッドにプレッシャーをかけていく動きだ。
KRÜ.Fは比較的、敵を引き付けてから撃ち合いに持っていきたい配置を取っているので、C9Wはミッドの浅い部分はコントロールすることに成功する。
Aショートにキルジョイがいる事が分かったところで、C9Wはより人数の少なそうなBサイトを挟み込もうとするが、KRÜ.Fのローテートを遅らせようと、一人でAショートにプレッシャーをかけ続けていたJazzyk1nsが隠れていたKRÜ.Fのオーメン、conirに倒されてしまう。KRÜ.FのAショートにおける『味方を隠す動き』は非常に参考になる。
この瞬間、Aショートを失ったC9WはB挟みを決行するわけだが、この時点で、ミニマップを見ると、KRÜ.Fは人数有利を作れてはいるものの、A側とB側でかなり分断されてしまっている事がわかる。
このままでは味方の寄りが間に合わず、サイトで耐えきる事が難しいので、サイトを明け渡す前提で、例えば2人でBメインを取りに行くなど、リテイクのためのエリア取りをしたいところだ。
実際にはKRÜ.Fはバックサイト2人で耐える判断をする。結果は1-2トレードで人数差がなくなってしまった。
2-2交換が出来れば人数有利をキープできたので、決して『間違った判断』だとは言えないが、ここで『イニシエーター2人』がダウンしてしまった事でリテイクの難易度が上がってしまったのは間違いないだろう。オーメンのconirが味方を助けるスモークを投げていないのもやや気になるポイントだ。
最終的にはC9Wのオーメン、katsumiがKRÜ.Fのリテイクをシャットアウトする。この3キルは間違いなくkatsumiの撃ち合いの強さが表れたシーンだったが、リテイクの為のスキルがKRÜ.Fに残っていれば結果は変わっていたかもしれない。
3rd "1stがKRÜ.Fに与えた影響"
2ndラウンドを終え、KRÜ.Fが武器有利で迎えた3rdラウンド。1stでサイト耐えに嫌なイメージを持ったのか、武器有利ラウンドはリテイク重視と決めているのかわからないが、KRÜ.FはAサイトを早々に空ける選択を取る。
リコンボルトと、katsumiのオーメンウルトで『サイト中は薄い』という判断を下したC9Wは、比較的楽にAサイトを取り切ることに成功する。
武器が弱いC9Wは、ヘヴン下や、シャッター前など、なるべく近距離で撃ち合える場所を選んでポジションを取っていく。KRÜ.Fとしては、比較的長いレンジで撃ち合えるヘヴンをまずはしっかりとってからリテイクに動き出したい。
Jazzyk1nsがこの逃げられないポジションにいる事に気づいたからか、理由はわからないが、conirが一人でスキルも使わずに動き出してしまう。Jazzyk1nsのこのポジションはヘヴンからの斜線を切る事ができないので、メインスモークを炊いてヘヴンのプレイヤーに撃ち合わせれば簡単にワンピックを取れたはずだが、結果として逆にワンピックを取られる形になってしまった。
世界大会の場で緊張していたのか、積極的に撃ち合っていく事でパフォーマンスを上げていくタイプのプレイヤーなのかは、過去の試合をチェックしていないのでわからないが、conirはここまでの3ラウンドだけ見ても、ややスキルを使わずに倒される場面が目に付くように感じる。
C9Wはサイトを取り切った後もまだ時間かせぎが出来ていたため、meLの遅めのラークが間に合い、3ラウンド目も武器不利だったはずのC9Wが獲得するという結果になった。
やはりこのラウンドを見ると改めて実感するが、0デュエ構成のC9Wは『足止め』能力にたけており、一度フリーで設置されてしまうとかなりリテイクが厳しくなる。ワンピックを狙っていくか、サイト中で耐えて簡単に設置させないか、今後のKRÜ.Fの対策にも注目だ。
7th "遅すぎたアグレッシブ"
実はここまで取り扱っていないが、2,4,6ラウンド目と、エコラウンドのKRÜ.Fは徹底して固まってどこかをプッシュする動きを見せており、比較的広がってミッドを重視してきたC9Wにはそれが刺さってワンピックやトレードが取れていた。
しかし、その後の少人数戦になるとやはり武器不利が重くのしかかり、ラウンドを取れていなかった。『もしこれがバイラウンドだったら...』そう見ている僕も思ったし、プレイしているKRÜ.Fの選手たちも感じたのかわからないが、ついに7ラウンド目にしてバイラウンドで『アグレッシブなセットアップ』を決行する。
それを読んでいたのか、それとも嚙み合いなのか、C9Wはミッドを捨ててA攻めを選択する。
ワンピックを取り損ねたKRÜ.Fは、裏を抑えて勝負しに行く事で、先ほどやられた『meLの遅めラーク』を対策しようとするが、romiが1on1に負けて逆にピックを取られてしまう。
しかもC9Wは早めのリテイクを警戒してか、KAY/Oウルト中は安易に設置せず、サイト中で息をひそめてKRÜ.Fを揺さぶる。
BoBがソーヴァウルトを切ったところで、『壊せなくなったから』とconsuもキルジョイウルトを使っていくが、C9Wはまだ設置していないうえ、時間も50秒残っており、katsumiのオーメンウルトでさらにKRÜ.Fをかく乱していく。
気づいたらKRÜ.F目線で取れているエリアがほとんど無くなってしまい、さらに人数不利ということもあり、C9Wが好きなように攻め先を選べる状況が整ってしまった。
これが全て、『C9Wの掌の上』なのか、それとも『何かしらのトラブルへの対処が上手かった』のかはわからないが、KRÜ.Fの動きに比べて非常に落ち着いた雰囲気というものが感じられる。GCの発表があるはるか前から女性チームとして練習を積み重ねてきた自信が表れているのかもしれない。
10th "ようやく取れたラウンド"
B中守りはここまで確かに上手くいっていなかった印象があるが、A中守りの形はあまり見せてこなかった。出来ればAに攻めて欲しいKRÜ.Fは、プラウラーでBメインを掌握し、マーケットからもジャンプピークで圧をかけ、C9WをAに行かせることに成功する。
トレードの末、人数では3on4と差をつけられてしまうものの、C9Wを囲い込めたKRÜ.F。meLの使ったサイファーウルトで囲まれている事に気づいたC9Wはbaeshtの待つAサイトに飛び込んでいってしまう。
2on2になったが、設置の出来ていないC9Wに対して、相手の配置がある程度わかっているKRÜ.Fに少人数戦の軍配は上がった。待望の1ラウンドはやはり、『設置される前に人数を削る』事が出来て初めて取る事が出来たわけだ。
C9Wとしてはまだまだ時間は残っていたので、焦って設置しに行くのではなく状況をもう少し整えられたら少人数戦も勝ち切れたのかもしれない。
13th "ミッドの取り合い"
攻守が変わって、攻めがKRÜ.F、守りがC9W。攻めでもミッドをしっかりコントロールしていたC9Wは当然守りでもミッドにプレイヤーを集めていく。しかしKRÜ.Fは最終的に5人全員をミッドに集めたので、ここでの撃ち合いに勝利し、そのままAショートを取り切り、1stラウンドを獲得する。
15th "エリアコントロールと人数差"
ファーストピックこそ取られたものの、ミッドを守っていたBoBをCTまで押し下げる事に成功したKRÜ.F。マーケット付近までしっかりエリアをとって、相手をBに寄せたい動きにも見えたが、Bメインの音をずっとサイファーカメラでmeLが聞けているので、C9WはJazzyk1nsをAに戻すことが出来た。
最終的にAショートを3人で守れたC9Wはしっかりキルトレードをして守りの3ラウンド目を取り切る。
KRÜ.Fの動きも決して『悪くはない』のだが、やはり先に人数差を作れた分、C9Wは無理せずどっしり構えられているので、そこを崩すことはできなかった。
やはりエリアが取れているので、上手く相手を動かして局所的な人数有利を作れればそれがベストだが、簡単なことではないだろう。
最終17th
最終ラウンドとなった17ラウンド目は、meLが早々にBメインをプッシュしてエリアのほとんどを一人で掌握する。CRに加入したばかりのMunchkinを彷彿とさせる、自信に満ち溢れたアグレッシブなプレイだ。
結果的にmeLは1-1トレードでやられたので、その瞬間C9Wの持っていたエリアはほとんどなくなってしまう。3on4とはいえ、急にエリアのほとんどを失い、ややC9Wも浮足立った様子があったので、つけいる隙があるかと思ったが、KRÜ.Fはそのまま50秒近く残した状態でA攻めを敢行。
中守りしていたalexisに全員が倒されてしまい、あっけない幕切れとなった。
まとめ
勿論、C9Wのチームとしての連携力、撃ち合い、個々のアビリティ判断など、総合的に見て『実力差』がでてこのラウンド差になったとは思う。特に試合を見ている限り、meLとkatsumiのクレバーな動きに目が行く。そして、大事な撃ち合いをきっちり勝ち切る勝負強さも彼女らの魅力の一つだろう。
しかしこう俯瞰で見ていると、いかに『やられたことに対してインゲームで修正する』のが難しいかが良く分かる。強力な作戦も、出すタイミングによっては機能しないし、『撃ち合い』で負けた部分を『立ち回り』が悪いと思った結果、さらに良くない方に修正してしまう事もあるだろう。
KRÜ.Fはその修正が大体『後手』に回ってしまい、上手く対策をC9Wに『差す』事が出来なかったという印象だ。
もっと『自分たちのやりたい事』を早い段階で押し付けられたら試合の展開を掴めるのかもしれない。
また、エリアコントロールという観点で見ても、C9Wの方が、『ミスなく』『より深く』『より素早く』取れていて、さらに取れたエリアを『上手く使えている』印象だ。素早く動いている分、相手のカウンターの動きを見て、攻め先をコントロールできるし、エリアを一部取り返されてもその後のオプションがたくさん残っている。
やはり、伊達に2020年からほぼ同じメンバーで活動してきてないな、という連携力の高さを見せつけてくれた。
そんなC9Wは、G2 Gozenに敗れ、lowerブラケットに落ちてきている。トーナメント表を見る限り、今後の大会の展開によってはFENNNEL HOTELAVAと対戦する可能性もあるので、まだまだGC、注目してみていきたいと思う。
VCT 2022 Stage2 各リージョン毎の情報まとめ (6月6日時点)
7月10日から予定されているMasters Copenhagenへの出場権12枠をかけて、各地域での予選が着々と進められている。
現時点での世界各国のChallengersの様子、注目チームについてまとめていく。
JP(1枠)
Week2メインイベントが終了し、Playoff出場8チームが確定。抽選まで終了して、
画像のようなトーナメント表に。
勿論、どこが優勝してMastersへの出場を決めるのかも気になる所だが、LCQへの出場権も今回のPlayoffの結果によって決まるため、注目だ。
残念ながらPlayoffへの出場がかなわなかったチームは、現時点でのサーキットポイントが足りていないため、今年のVCTは終わってしまったということになる。
また、Stage1でPlayoff Japanに出場できていなかった、BB,JDT,SGの3チームは現時点で上位チーム相手に40ポイント以上の差をつけられているため、日本予選を優勝する以外にLCQに残れる可能性はない。
現時点でサーキットポイント上位5チーム(ZETA,CR,FAV,Nth,RC)のうち、1位のチームがChampionsの直通切符を手に入れ、ほぼほぼこの中から3チームがLCQへの出場権を手にすると言っても問題ないだろう(もちろん大番狂わせが起こるのはそれはそれで面白いからよし)。
そして、この5チームのうち、初戦から対決があるのが『CRvsRC』だ。
もちろん、ダブルエリミネーション方式のトーナメントなので、初戦で敗れてもまだ勝ち上がる可能性があるとはいえ、かなり上位に食い込むのが厳しくなるのは事実だ。
特にサーキットポイントが現時点で同率4位ながら、メインイベント時点ではかなりの仕上がりを見せている『REJECT,Northeption』この2チームに注目してみていきたい。
また、世界3位の快挙を成し遂げたZETAに対抗できるチームがどれだけあるのかにも注目が集まる。
NA(2枠)
今大会のNAは今までで最も混戦だ。本日の試合結果によって、SENに加えてC9の敗退が確定し、グループBはPlayoff進出がEG,OPTC,LG,FaZeとなった。まだグループステージではあるが、Masters1の優勝チームのOPTCが既に1試合負けていて、グループBは3チームが3勝1敗で並んでいることからもNAのレベルの高さがうかがえるだろう。
グループAはTSMが敗退。100TがNRG戦に勝利したため、2勝3敗で並ぶ可能性のあるチームがNRG,TGRDに絞られたが、TSMはこのどちらもに直接対決で敗れているため、5位以下が確定した。
上位3チームが確定しているため、Playoff残り1枠をかけて12日にNRGとTGRDが直接対決をすることになる。
Stage1ではダークホース的立ち位置からNA2位まで駆け上がったTGRDは、ジェットナーフ後の新環境への適応に苦しんでいるようだったが、構成を戻して調子を取り戻しつつある。
NRGは補強で獲得したEthan以外、スタッツの安定したプレイヤーがいないように見える。tex,s0mの働き次第ではもちろん勝ち目はあるが、ややTGRDがリードしていると言ってもいいだろう。
EMEA(3枠)
NA同様メインイベントでリーグ制をとっているEMEAだが、こちらはNAと違って各グループの上位3チームずつがPlayoffへの駒を進める事になる。
グループAは現時点で既に3勝している上位3チーム(FNC,FPX,ACE)のPlayoff出場が確定している。よってMasters1で5-6位だったG2が敗退したことになる。Masters1でStand-inしたEnzoに加え、Alfajerを新たに迎えたFNCがかなりの安定感を見せているようだ。
グループBは、M3C(元GAMBIT)に注目だ。最新メタへの適応に苦しんでいるようにも見えるM3Cだが、11日のTL戦に勝利する事が出来ればPlayoff進出が確定する一方で、もし敗北した場合、最大3チームが2勝3敗で並ぶことになる。
VCT EMEA公式ルールによると、同率の場合は
・直接対決の戦績
・直接対決でのマップカウント
・直接対決でのラウンドカウント
・全試合でのマップカウント
・全試合でのラウンドカウント
この順に各チームを比較して順位付けする事になる。直接対決でBIGに敗北しているM3Cは、まだ敗退の可能性が残っている事になる。
KR(1枠)
いつも通りDRXが国内では圧倒的な強さを誇っている。なんとここまでのグループステージでは1マップも落としていない。
Masters1では優勝候補にも名を連ねる中、ZETAに敗北して敗退していったが、今回大会も相変わらずその戦略性の高さに注目だ。
BR(1.5枠)
BRは現在グループステージの真っ最中で、各グループ5チームの中から上位3チームがPlayoffに進出する。Masters1で2位の好成績を収めたLOUDは、今大会も国内では他チームに付け入る隙すら与えていない。
グループステージにおけるK/Dはプレイヤー5人全員が1.4を超えており、サポート陣を含めて一切の穴が無い事がよくわかる。
また、KAST%(ざっくり言うと『どれだけ無駄死にしてないか』という指標)の高さから、このチームがどれだけ連携が上手く、『5対5の爆破ゲーム』が上手いかが分かる。
NIP、mibrなど、十分強いチームもいるリージョンではあるが、やはりLOUD一強の様相はStage2も変わらないだろう。
LATAM(1.5枠)
LATAM-N,Sそれぞれのグループステージが終了し、各地域Playoff→LATAM全体のPlayoffという風にトーナメントが進んでいく。現時点では例のごとくKRUが安定した成績を収めており、国際大会皆勤賞を継続できるかどうかに注目が集まっている。
APAC(2枠)
こちらも各グループでの予選が終了し、APAC地域全体でのChallengersが予定されている。順当に下馬評通りのチームが勝ち上がってきているが、やはり注目はPRXだろう。
MY&SG予選にて、毎試合のように構成を変えつつも敵チームを破壊していた様子は全世界に衝撃を与えたと言っても過言ではない。
MY&SG Playoffが確定したタイミングだったので、構成や作戦を隠すためのピックではあったのだろうが、PRX全員の破壊力の高さを改めて実感する事になった。特に、普段エースプレイヤーとしてデュエリストを使いながらも、様々なロールでキルを量産したf0rsakeNのゲームセンスの高さには脱帽だ。
腰撃ちは何故クロスヘア通りに飛んでいかないのか
リココン難しいんだよこのゲーム!!!
CS:GO経験のないVALOプレイヤーは誰もがこの壁に一度はぶち当たった事があるでしょう。
先に言っておきます。別にこの記事を読んでもリココンは出来るようになりません!
腰撃ちは何故クロスヘア通りに飛んでいかないのか
結論から先に言うと、このゲームが銃の扱いに関してはリアル志向であること、そしてクロスヘアはあくまで『人間』の目線の先を表しているだけで、『銃口』の向きを表しているわけでは無いからです。
まぁこれはあくまで考察に過ぎないのですが、まあ理には適っていると思いますし、そこそこの信ぴょう性はあると思います。
さて、この男が何を言っているのか、もう少し細かく見ていく事にしましょう。
まずは腰撃ちとADSを比較してみる
ある程度VALORANTをプレイした方ならお気づきだとは思いますが、このゲームは腰撃ちだとクロスへアよりも上に弾が飛んで行ってしまいますが、ADS(覗き込み)だとクロスヘア通りに弾が飛んでいきます。
比較用に動画を置いておきます。ADS(右側)はクロスへア通りに弾が飛んでいる事を確認してください。
これを考えると、単に『ゲームの難易度をあげたいから』という理由で腰撃ち時の弾の飛び方をクロスヘアからずらしているわけでは無さそうですね。
クロスヘアの意味
If you're looking for a new crosshair, maybe @zetadivision can help.
— VALORANT Champions Tour (@ValorantEsports) 2022年4月12日
Copy the player code of your choice below to get their profile! #VALORANTMasters pic.twitter.com/9AewnNxfXX
ZETA DIVISIONメンバーのStage1 Masters 時のクロスヘア設定
一方で腰撃ちの時はクロスヘアよりもさらに上方向に弾道がズレて言ってしまう事から、クロスヘアは銃口の向いている先を表しているわけではないと考えられます。
そこでクロスヘアのもつ意味を他に考えてみましょう。真っ先に候補に挙がるのは『視点』ですね。キャラクターの目線の先、目の焦点が合ってる部分が常に画面の真ん中である、というふうに考えてみましょう。
実際、FPSの視点カメラの高さ、第三者目線で見た時にキャラクターの首の向きが固定されている事、これらはクロスヘアが『目線の先』であることに矛盾しません。
腰撃ちとADSの現実での挙動
腰撃ちとADSでクロスヘアに対しての弾の飛び方が違うのであれば、それぞれについてもっと深掘りしてみれば、クロスヘアの意味に近づけるのではないでしょうか。ではさっそく考えていきます。
腰撃ちする時とADSする時、この2つに関して現実ベースで銃の挙動について考えてみます。
所謂腰撃ちは、本来目線と銃口がかなり離れており、さらには反動制御も難しいため精度が悪く、現実ではマシンガンでの威嚇射撃や、制圧射撃など、高精度に狙う必要のない場面で使われる撃ち方のようです。
こちらの画像は1987年公開、プレデターのワンシーンで、アーノルド・シュワルツェネッガー演じるダッチがジャングルの中で銃を乱射する様子です。
この撃ち方を見るとわかる通り、銃を撃つと反動で銃口は確かに上に向かうのですが、そのほとんどは腕で吸収できるので、目線は安定している事がわかります(多少は上半身、及び目線も反動で上にブレるはず)。
結果、この絵のように、銃を撃っている人間の目線に交差して、上に向かって銃弾が発射されるという状況になる事が容易に想像できます。
一方、銃を撃つ兵士を想像する時は、このように頬を銃につけてしっかり狙っている様子をイメージする方が多いのではないでしょうか。
このように頬を銃身につけた状態で銃を撃てば、当然銃の反動による銃身の動きに連動して顔も動くでしょう。反動を制御しようとせずに撃ちっぱなせば、首にものすごいダメージが入りそうですね。
結果としてこのように目線と銃口の向きが限りなく近しいものになる事が想像できます。
考察結果を整理する
さて、クロスヘアが目線の先を表しているという予想と、現実世界における腰撃ち、ADSの挙動を照らし合わせてみます。
見事に矛盾がないですね、僕のつたない絵を見比べてもらえればわかる通り、現実世界では腰撃ちすれば目線の上に弾が飛んでいき、銃を顔にしっかりつけて覗き込めば目線通りに弾が飛んでいきます。
つまり、クロスへアは目線を表すと仮定した上でゲームに話を還元すると、腰撃ちすればクロスヘアよりも上に飛んでいき、ADSすればスプレーしたときにクロスヘア通りに弾が飛ぶという事になります。
そしてこの予想は最初に弾道比較の動画に示した通り、実際のゲーム内での挙動と一致している事がわかります。なんだか仮定法の証明をしている気分ですね。
よっておそらく、仮定した、『クロスヘアは目線を表す』これは正しいと言えるでしょう。
そして最初の結論に戻ってきます。腰撃ちは何故クロスヘア通りに飛んでいかないのか。
①銃の挙動がリアル→腰撃ちは反動を手で抑えられて、ADSは顔に銃をつけて撃つ。
②そしてクロスヘアは目線を表しているので、腰撃ちすればその上方向に、ADSしたらほぼ目線通りに弾が飛ぶから。
VALORANTで学ぶ、『必要十分条件』
それは数Aで初めて出会い、その後も登場するたびにそのややこしさから高校生たちの頭をぐちゃぐちゃにしていく言葉...。
『初めて習ったよ』という人だけでなく、『実は僕、高3なんだけど...』という人でも、『あれ、どっちがどっちだ...?』となってしまう人、少なくないのではないでしょうか。今、何回否定の『ない』を使ったでしょうか。
前置き
そもそも数学というのは、『自然科学の基礎』と言われる事もあり、具体的な要素を無くして、『より抽象的に、より抽象的に』と洗練された学問です。かのニュートンも、万有引力を発見した物理学者であると同時に、物体の運動を考える上で微分積分学を生んだ数学者でもあります。
それが数学の魅力であると同時に、『文字ばっかりでわかりづらい』『難しい用語が多い』といった、『数学嫌い』の学生を生み出してしまっている要因になっているとも思います。
そんな数学嫌いの皆さん同様、中学生の頃は数学に苦手意識があり、定期テストで20点台も記録していた僕が、高校で理系を選択してから『あれ?』と躓いていた時に必ずやっていたことが、『具体例をイメージする』ことでした。この考え方は、『必要十分条件』以外の場面でも必ず役にたつと思います。
それでは早速必要十分条件についておさらいしていきましょう。
定義
まずは定義の確認です。苦手な人は定義という言葉を見るだけで蕁麻疹が出そうになるかもしれませんが、サラッと流し見でもいいのでチェックしておいてください。
命題、 p⇒q が真 である時、
qをpの必要条件、pをqの十分条件 という
ややこしいですね
この"⇒"は、『ならば』と読みますが、これに関しては口に出しながらa⇒b(aならばb)、a⇒b(aならばb)って書いてればそのうち覚えます。力技ではありますが、書く順番、言葉の意味、⇒の向きが対応してるので、頭に入ってきやすい部類だとは思います。
では改めて、この定義を具体化してあげて、VALORANTで例えてみましょう。
具体化
定義の"p"に『プロゲーマー』"q"に『デスマ強い』という具体例を入れてみます。せっかくなので数学っぽく、『代入』なんて言ってみましょうか。
代入した上で命題を読み直してみると、
『プロゲーマー』ならば『デスマ強い』
これが真であるかどうかを考える必要がありますね。うん、合ってるので真です。
大会でよく見るようなプロの方々は、そこんじょそこらのデスマッチでは負けません。
僕もよくプロが『デスマ〇連勝した~』みたいなツイート上げてるのを見て、『おれは!!!!弱いっ!!!!』ってどこぞの兄を失った海賊みたいになってしまいます。
命題の逆も考える
さて、ここで命題の『逆』についてもかんがえてみましょう。数学における逆は⇒の向きを変えるんでしたね。q⇒p という命題にも先ほどの具体例を代入してみましょう。
『デスマ強い』なら『プロゲーマー』
これは偽でしょう。
デスマで死ぬほど強い匿名の敵に当たって、『おいおい、こいつ絶対プロゲーマーじゃ~んウキウキ』って思ってリザルト画面を見たらわけわからん見たこともないID出てきた時のなんとも言えない無力感、皆さんも身に覚えがあると思います。
そうなんです。デスマの撃ち合いが強いからといって、必ずしもランクなどの実戦で強いとは限らないんですよね(戒め)。
改めて語句のチェック
p=(プロゲーマー)、q=(デスマ強い)という条件のもとで、p⇒qという命題が真であり、その逆のq⇒pが偽であることが確認できたところで、それぞれの名称について見ていきます。
必要だの、十分だの、こんな感じで抽象化されたネーミングは、一見すると『覚えづらい、わかりづらい』ように思えますが、昔の頭のいいお偉いさんが考えた物なので、ちゃんと理にかなったネーミングになっていることが確認できると思います。
デスマが強い事、つまりqはプロゲーマーである、pには必要な条件です。
おや、ほぼ定義通りの文章が出てきましたね。定義にはqをpの必要条件という、と書いてあったはずです。
そう、デスマが強いことはプロゲーマーになるための『必要条件』なのです(もちろん、どのような過程を経てデスマなどの撃ち合いが強くなったかは人それぞれですが)。
必要条件さえどっちかわかってしまえば、『その反対側が十分条件だ!』というふうに決めうってしまってもいいですし、ちゃんと理論的に『プロであれば十分にデスマが強いはず』と考えてもいいですが、なんにせよ十分条件についてもわかってくると思います。
必要十分条件、同値
また、今回は『命題の逆は偽になる』ような具体例をもってきましたが、もちろん真になるパターンもあります。
例えば、
生きている⇒死んでいない
死んでいない⇒生きている
こんな例の場合は、⇒の向きを逆にしてもどちらも真になりますね。このようなとき、『生きている』事は『死んでいない』事の必要十分条件と言います。
『は?言い換えただけだから当たり前じゃん』と思うかもしれませんが、必要十分条件とはそういうもので、必ず左右の事象は同じ事を指すので、この時のpとqの関係を同値と言い、p⇔q というように表すこともあります。
よく証明なんかで式変形する時、
xy=0
⇔x=0 ∧ y=0
みたいな感じで気軽に使いがちですが、本当に『⇔で結んだ二つが同値関係か』はきちんと精査する必要があります。
まとめ
とまぁこんな感じで、冷凍した魚をまた解凍するように、抽象化されたものを具体化してあげると、当たり前ですが実際の"物"をイメージできるので、『スッ』と言葉の意味が頭に入ってきます。
必要であれば、具体例を確認したうえでまた、p⇒q などの文字に戻して問題用紙の余白にメモしてあげれば、問題を解く時にスムーズに考えられるようになると思います。
また、数学でそこそこ出てくるのは当然として、この『必要条件、十分条件』という言い回しはどうやらビジネスシーンなんかでもちょこちょこ出てくるようです(筆者はまだ学生なので伝聞ベースの話です)。
数学でならった用語を文系の人たちも含めて一般的なビジネスという文脈で使うのって中々興味深いですよね。会話しているお互いが勉強をしっかりしていて、意味が通じるのであればそれだけ便利な言葉という事です。
こういうのが所謂、教養が出る部分なのかなぁなんて思ったりもします。『机に齧りついてみっちり勉強しろ!』なんて事が伝えたいわけではないのですが、最低限、どんな人とでも会話が通じるレベルの教養というのは身に着けておきたいものです。
守りのプッシュと攻めのラーク~FPSはじゃんけんである~
ハイリスクハイリターンな動き
VALORANTなどのFPSゲームにおいては、それなりのリスクを負う事で大きなリターンを得られる動きがあります。守り側のプッシュはそれの最たるものと言えるでしょう(APEXなどのバトロワゲーなどは基本的にローリスク重視ですが)。
守り側のプレイヤーが詰めていく事には、「裏取り」だけでは説明できない意味があります。
そもそも裏取りとは
そもそも「裏取り」とは。読んで字のごとく、相手の「裏」を取る行為です。厳密にいえば少し意味は違いますが、これは「後ろを取る」と言い換える事ができます。では、VALORANTなどのタクティカルFPSにおいて「前後」は不変なものでしょうか。
ここで勘違いしているプレイヤーが多いイメージです。攻めと守りのスポーン地点が固定であるため、自分たちのスポーン側に敵が回ってきている事、これを「裏」と呼ぶのは間違ってないでしょう。しかし、攻め側の進行方向が必ずしも「表」を向いているのか。
答えは「否」ですね。攻め先が2か所以上あるゲームなので、「ローテートの瞬間」は相手は一斉に後ろを向きます。
このタイミングで「裏取りだー」と詰めていってしまうと、「敵の背後を取ってイージーキルを取る」という裏取りの本質が損なわれてしまいます。
ここまで極端になる事は少ないにしても、やはり相手が「攻め込みたい、前に進みたい」と思っている時に後ろをつくのが裏取りの本質です。どうしても「裏取りしようとして死んでしまう」という人は、「相手が攻めてるのか、止まってるのか」を意識して進むタイミングを考えるのがおすすめです。
裏取り以上のエリア取りの意味
では、相手がローテートする事を考えた時、守り側のプッシュに意味はないのか。これもまた「否」です。守り側がエリアを広げる事には「裏取りからキルを狙う」以外にも意味があります。
攻め側がローテートの選択を取る時、攻め側にラークがいなかった場合、守りがどこまでプッシュしているのかを知るすべはほとんどありません。索敵アビリティはクリアリングの難しいサイト内に取っておきたいので、基本的に体でクリアリングをしながらローテートする事になります。
すると、守り側が前に出てエリアを広げていた場合、オフアングルでの待ちやタイミングピークをするだけでかなり簡単にキルが取れます。特にローテート時はスピードを重視して足音を消さずに移動するので、かなりキルを狙いやすいですね。
以下に貼った動画なんかはまさにその例で、(最初の数秒は飛ばしてください)15秒くらいで敵のローテート音に気づき、そのまま待ってるだけで相手のローテートを抑えきる事ができました。
また、敵のカバーがしっかり入って1-1交換されたとしても、敵のローテートに早く気付く事ができるので、守りのシフトが先に完了して待ち受ける形を取れる事が多いです。
さらに詰めた場所、その後の見方にもよりますが、ローテートを見る事ができるので、プッシュしたプレイヤーがしっかり生きている間は基本的にもう片方のサイトの守りを安心して固める事ができます。相手の攻めが止まっているように見えても、「あれこれローテートしてる?待ってるだけ?」と不安にならずにどっしり構えられるので、振り回される事が減ります。
そのまま相手がローテートせずに時間をおいて改めて同じサイトを攻めてくるようであれば、そこで初めてエリア取りしたプレイヤーは「裏取り」に入ればいいわけですね。
じゃあ守りは詰め得なのか
どんどん奥が深くなっていきますね。ここまで守りのプッシュのメリットを聞くと、「じゃあ毎ラウンド守り詰めたらええやん」となってしまいそうですが、そんな単純だったら競技シーンはこんなに盛り上がってないです。
当然攻め側にもカウンターとなる動きがあります。それが、詰め待ちやラークという動きになってくるわけです。
攻め側から見た「詰め対策」
単純に何も考えずに詰めてくる敵に対して攻め側がまず思いつくのは「詰め待ち」です。基本的に守り側のプッシュは「バレない事」を前提としてその旨みを享受できます。静かに足音を消してゆっくり詰めてくるのであれば、「待ち」が刺さるのはなんとなくわかるでしょう。
しかし賢いプレイヤーは詰め待ちに対してもちゃんとケアしてきます。攻め側がアクションをかけずに露骨に「待ってます」の雰囲気を出してしまうと、素直に守られてしまい、攻め側は時間を無駄に使ってしまう事が多いです。
かけるべき場所にしっかりアクションをかけて、プッシュしたい守り側のプレイヤーが釣りだされたところをしっかり刈り取る。プッシュせずに素直にシフトしてそうなら攻めはローテートを選択する。ラークがいればこういう動きを攻めがとる事が出来ます。
結局FPSはじゃんけんである。
一方で毎回ラークをしていると、守りが「2人でプッシュしてくる」ようになったり、それに対抗して攻めは「ラッシュ」を選択するようになったり...。攻め方守り方は単純ではなく、お互いの動きに対してちゃんとカウンターの動きが存在します。めちゃくちゃ複雑になったじゃんけんのようなものですね。
じゃんけんで「グーしか知らない」あるいは「グーしか出せない」人がいたとしたら、その人に勝つのは簡単ですね。
毎ラウンド同じ動きをしたり、そもそもどういう動きがカウンターになるかを知らなかったり、相手がずっと同じことをしている事に気づけなかったり。こういった要素はチームの負けに直結してきます。
まずは最低限じゃんけんが出来るようになって初めて、「相手が何をしてくるのか読む」とかそういう先の動きを考える事が出来るようになります。
FPSにおいて基礎的な立ち回りが大事と言われるのはこういう部分ですね。立ち回りが単純だと簡単に対策されてしまいます。それでも勝ち切ろうと思ったら、「グーでパーに殴り勝つ」みたいな相当な撃ち合いの強さが要求されます。
逆に言ってしまえば、「グーでパーに殴り勝つ」を通されてしまうと、かなり不利な展開になっていきます。野良試合だと上手く意思疎通が取れなかったり、とんでもなく相手の撃ち合いが強かったりでちょいちょいそういう事が起こってしまいます。こういう時はある程度「仕方ない」と受け入れる事が必要になる場合もあります。
撃ち合いと立ち回りの「総合力」でランクは上がると上位帯のプレイヤーは口を酸っぱくして言っていますが、ほんとに勝率を高めようと思って考えるとまさしくその通りだなと理解できると思います。
自分も芋からさらに上がっていく為に苦手な所を無くしていきたいですね。